やたらと長い履歴書 その3
知り合いのつてで、広告代理店に契約社員として雇われた。
結婚したのはこの頃だった。
嫁さんの親父さんに言われた。
何ができるん、資格は?
何もなかった自分は、格をつけるため
二科展のイラストレーター部門に出品した。
なぜか入選した。
上野の森美術館まで佐賀の片田舎から表彰状を受け取りに行った。
「おめでとう、でお金になるんか?」お金にはならなかった。
今まで通りの仕事を続け時間だけが過ぎて行った。
そして風の噂で(風の噂という言葉は本来存在しないらしい)
デザインがMacというコンピューターで出来るらしく、デモンストレーションがあるらしいと聞いて実際に目で見に行った。驚愕した。驚いた。ペンや定規がいらん、画面の中で色が塗られていく。
世界が変わると感じた。
一目散にまだ一年も経っていない人気車種の新車を売り飛ばし、当時高額のMacを買って残りで軽自動車に乗り替えた。
もともと字が汚い俺だったので鉛筆ラフデザインの文字が苦手だった。
ところがMacを使うと、手書きをしなくて良い、夢のような箱だった。
契約社員だったし、将来の見通しが不安やったのもあって思いっきりMac抱えて独立を果たしデザイン会社を立ち上げた。事務所も借りた。
会社といっても個人事業だから事務所やね。
将来の見通しが立たんから独立ってのもアホやけど。
営業が出来ない自分にとっては、まずは仕事が来ない。
それでも元いた広告代理店からと印刷会社から仕事が来た。
そして世の中が一気に変わって来た、デザインをMacで仕上げる。
当時ほとんどMacでデザインをする人がいなかったんで、うちに仕事が入り込んで来た。
仕事も入る、スタッフも増えた。
旅行にも行っていた、大好きな沖縄。とても充実していた。
天狗にもなっていた。独りよがりで偉ぶって、ワンマンタイプ。
そして数年後リーマンショックが来た。